2008年12月から「モニプラ」(ソーシャルメディアマーケティング支援システム)を利用した、ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)に取り組まれているシャレコスキンケア店舗運営リーダーの大野氏に、2500名を超えるファンに支持され、2009年の「ファンサイト・オブ・ザ・イヤー」を獲得するまでに至ったファンサイト運営の実際をお聞きします。

--- まずは、ソーシャルメディアを活用しようと思った理由と、モニプラ出展の経緯をお聞かせていただけますか?モニプラに出展される前はどのような広告活動販促活動をされていらっしゃったのでしょうか?

大野:弊社は2005年から自社開発の美容・化粧品を販売するECサイトを運営していまして、当初から購入者の体験談やレビューなどを活用する取り組みは行っていました。しかし、購入者の声は信頼を高めることは出来ても、新しい消費者への認知にはつながらないため、「シャレコ」を知っていただく方法を模索していました。そこで最初は、自社商品を正しく理解していただくための冊子を作成し、それをとにかく配布するためにメルマガスタンドやアフィリエイトサービス、懸賞サイトなどを利用していました。
 ただ、そうしたサービスで集まってくる「声」には「熱」が感じられなかった。「自分の言葉」で語っていないという印象で、その人らしさとか思いが伝わってこなかったんです。そんなときに「モニプラ」から営業を頂きました。
 「モニプラ」では、参加ユーザーのモチベーションに金銭的な報酬がないので、純粋に商品に対するストレートな気持ちが投稿されていました。こんな「アツい」ブロガーさんたちと手を繋ぎたい、自社製品好きになってほしいという一心で「モニプラ」での施策をスタートしたんです。


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--- 1年半くらいのご運用で投稿企画を50近く開催されていますが、この企画のアイディアはどのような目的をもってお考えになっているのですか?

大野:初めは「モニプラ」でも、「美肌の秘訣」のような商品理解のための啓蒙冊子を配って、その感想を募るという企画を2~3回やってみたんですが、全く人が集まらなかった(笑)そこで視点を変えて、とにかくユーザーに楽しんでもらえる企画を考え始めたんです。その第一弾が、「シャレコウォッシングフォームで芸術的な泡を作ってください」という企画でした。洗顔料のサンプルを使用して「芸術的な泡」を作ってもらい、その画像を投稿してもらう内容だったのですが、それまでとは桁が違う人数の参加者が集まり、やっぱり参加して「楽しい」と思っていただくことが大切なんだと気付きました。そこで、頂いた投稿の中から1~10位まで選びまして、額に入れて賞状と一緒に贈らせていただいたところ、またその反響が大きくて、「ああ、これがクチコミっていうものなんだな」と。それからは商品自体のアピールというよりは、ユーザーの皆さんと一緒に楽しんでいこうという方針で企画するようになりました。



--- ユーザーの皆さんを楽しませたいとのことですが、開催する企画を動画で紹介するというのは画期的でしたね!どうして動画だったのですか?

大野:これはそもそも、弊社にはお客様に信頼していただくには積極的に「顔」を見せるべきという方針がありまして、企画した本人がちゃんと自分の言葉で話しかけることで説得力が違うだろうと思ったんです。それには文章だけでは足り無い気がして「動画」に挑戦してみました。

--- 企業人的な発想だと、こういう動画を公開するというのは、社内の了解を得るのが大変なんじゃないかなと思うのですが(笑)そのあたり、社内の反応はいかがでしたか?

大野:最初は、家庭用ビデオカメラで撮影していますし、編集なんて出来ませんから80回とか撮り直していて、一体何をやっているんだと思われていたみたいです(笑)でもどうしてもブロガーに自分自身で語りかけたいと社長に直談判しまして。ブロガーの反応を結果として見せることで、今では「こんな企画がいいんじゃない?」なんてアイディアをくれたり、一緒に撮ってくれたりと社長自ら協力してくれるようになりました。また、そんな様子を見ていた社内の雰囲気がとてもよくなった気がします。ユーザーとの距離を縮めようとしている姿に社内が共鳴してくれたというか、必死さが伝わったんですかね(笑)

--- ユーザーの反応はいかがでしたか?

大野:この動画で僕自身に興味を持ってくださる方がかなり増えましたし、話題のきっかけとしてブロガー同士の交流が増えたという手ごたえを感じました。また、ブログ上で「動画」についてコメントが交わされているところに、僕が直接返信を書き込むことでブロガーとの距離もぐっと縮まったと思います。

--- 参加者のブログへのコメント記入のお話が出ましたが、モニター商品発送時の手書きメッセージ、メール対応など、ユーザーとの直接的なコミュニケーションに関して、本当に丁寧に対応されていらっしゃいますよね?

大野:モニターに参加してくれた方、当選してくれた方には、ただ単に使い方説明書とガイドブックを同梱するのではなく、必ず手書きで一人づつに合わせたメッセージを添えるようにしています。また、メールでは堅くなりすぎないように「様」をあえてひらがなにしたり、カタカナを使ったり。少しでも身近に感じてもらえるように、かといって馴れ馴れしくならないように距離感には気をつかっていますね。

--- メールの敬称に「姫」を使われているのが、かなり評判になっているそうですが?

大野:それは、巣鴨でお年を召した女性方がすごく楽しそうにショッピングしながら、「私みたいなおばあちゃんでも「姫」になれるかしら」と言っていたのがヒントになったんです。女性はいくつになっても美しく、お姫様のように大切にされたいのだろうなぁと思いまして、女性の方には「様」ではなく「姫」という敬称を使うようにしました。そうすると、「姫なんて恥ずかしい」とか「呼ばれたことないけどうれしかった」などたくさんのリアクションを頂きまして、呼びかけ方一つでこんなに反響がちがうんだなという気付きになりました。それ以来、「皆さん」ではなく、お一人お一人と向かい合っているという意識を強くもって取り組んでいます。

--- そこまでユーザーと密に接していると、中にはちょっと対応に困る方もいらっしゃるのでは?

大野:僕の中には昔から「出会う人すべてが自分にとっての先生である」という信条があるんです。批判的な意見を伝えてくる人でも、クレーマーと感じるか、弊社のために伝えてくれてるんだなと感じるかは、自分の受け止め方次第。良い事も悪い事もまずはきちんと受け止めて、自分の出来る範囲できちんとお答えしていくようにしています。たとえば、厳しいご意見を頂いた時でも、最初は「率直なご意見ありがとうございます」と、わざわざ自分に連絡してきてくれたことに感謝する。そして自分の出来る範囲で今後努力する旨をお伝えすると、その場ではすぐにお返事がなくても、実はすごく熱心なお客様になっていただいていたという方が、実際に何人もいらっしゃいます。そして、そうやって日々「ありがとうございます」と対応しているうちに、いわゆる「クレーマー」のような方が少なくなってくるんですよ。これは本当に勉強になりました。ソーシャルメディアでは、日々の対応が必ず誰かに見られているということを身をもって実感しています(笑)

--- 先日間違ってメールを誤発信してしまったということを聞いたのですが、普通なら苦情が沢山来てもおかしくのに、逆に応援のメッセージが届いたそうですね?

大野:企画のモニター当選メールを2000人以上のファン全員に誤発信してしまったんですが、すぐに謝罪のメールを出したところ、そのメールに「参加してないのにおかしいなぁと思いました(笑)」とか「大野さんドンマイ!」みたいな励ましの返信が半数ぐらい戻ってきまして...本当にファンの皆さんに温かく見守っていただいているなぁと感激しました。お怒りのクレームは2、3通でしたね。その時ファンサイトのありがたさを本当に痛感しました。

--- 大野さんのそうしたキメ細やかなファンサイト運営の成果として、2500名以上のファンを獲得され(2009年末当時。現在は2700名超)、モニプラのユーザー投票によって2009年に一番ユーザーに愛されたサイトとして「ファンサイト・オブ・ザ・イヤー」を受賞されたわけですが、御社としてはSMMの効果をどのように評価していらっしゃいますか?

大野:ファンサイトを開設して1年半という時間がかかりましたが、2500名以上のファンの方に支えていただけるようになり、こうした取り組みを始める前の年に比べて、売り上げ自体も15%以上アップしました。化粧品というのは日々進化していますし、新製品も沢山発売される。良い物でなければいけないことは当たり前であって、だからと言って品質の良さだけでは必ずしも売れるとは限らない。「お気に入り」という愛着を感じていただかなくては、お買い上げいただけない時代がきているのではないかと感じています。商品情報を押し付けるだけではもう売れない。ファンサイトは、心に寄り添う働きかけが出来る「コミュニケーション」の場として、まごころを込めて運営しています。

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大野幸一氏 略歴
シャレコスキンケア店舗運営リーダー
お客様相談室、WEB店舗担当と併せて
2008年出展時よりモニプラファンサイト運営責任者
公式サイト http://www.shareco.co.jp/
モニプラファンサイト http://monipla.jp/shareco/


インタビュアー:清水佑哉(アライドアーキテクツ株式会社)

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 オンライントラフィック調査のHitwiseによると、イギリスでは5月のソーシャルネットワークへの訪問が11.88%に達し、ついに検索の11.33%を超えました。

出典:TechCrunch Europe : Social networks overtake search engines in UK ? should Google be worried?


 また、先週行われたIVS(Infinity Ventures Summit http://bit.ly/bTRt2H インターネット、モバイル、ソフトウエアなどIT業界の国内外の経営者・経営幹部を対象とした年2回の招待制のオフサイト・カンファレンス)では、ミクシィ代表取締役社長の笠原健治氏が「新プラットフォームの展望」と題した講演の中で、「これからはSEOではなく、SGO(ソーシャルグラフ最適化)の時代に変わるはずだ」と発言したことが話題となっています。

 これは、WEBマーケティングの主流がSEM(Search Engine Marketing)からSMM(Social Media Marketing)に変移するにつれ、最適化の対象が検索結果からソーシャルグラフへ、「キーワード」から「キーマン」に変化してきているということです。

 「Groupon」 www.groupon.com/ の成功や、日本でも「KAUPON(カウポン)」 http://kaupon.jp/ や「Piku」 http://www.piku.jp/ の登場で話題となっている「フラッシュマーケティング(タイムセール特化型ECサイト)」も、ソーシャルグラフを効果的に活用するからこそ、限定された時間の中でより多くの集客を可能にしています。

 他にもソーシャルグラフにそって表示される広告(ソーシャルアド)など、『ソーシャルグラフ』に着目した新しい手法が次々と誕生してきていますが、企業も一人の「個人」として扱われるソーシャルメディアにおいて、果たしてユーザーは、顔は見たことがあるけどよく知らない人に、いきなり「あなたの友達を紹介して」と言われたらどう思うでしょうか? 「私の友達だから仲良くしてね」と紹介してもらうためには、まず友達に紹介してくれる人と本当の「友達」になるべきではないでしょうか?

 「OpenID」や「OAuth」といった、インターネットサービスの垣根を越え、相互利用するための仕組みが整うにつれて、ソーシャルグラフはネット社会から現実社会へと、じわじわとその影響範囲を広げています。そのため、ソーシャルグラフに積極的に関与していくことで、今までよりも一歩、実生活に踏みこんだWEBマーケティングが可能になると考えられます。これからは、「いかに友人や知人にクチコミを伝えてもらうか」が一番のポイントになり、その鍵を握るのは「キーマン」=「人」なのです。

 では、どんな人とどのように付き合うか? それを見極めるのは容易なことではありません。個人ユーザーはネット社会において、実生活以上に多面性を持っているからです。mixiとFacebookとグリーとブログとTwitterと...それぞれ違う「私」かもしれません。

 そこで、ソーシャルメディア上に多角的に接点を持つことが、今後ますます重要になってきます。交錯する「つながり」の中で自然と浮き彫りになる人物像を把握し、適切な方法で最適な関係性を築く。中長期的なSMMによる、「アドボカシー(支持)」や「エンゲージメント(両思い)」に基づいた関係性になって初めて、ユーザーの持つソーシャルグラフへの本質的なコンタクトが可能になるのではないでしょうか?

 SGO(ソーシャルグラフ最適化)は、一朝一夕ではなし得えません。マーケティングを取り巻く環境の急激なソーシャル化に対応するためには、今からすぐ、あなたの「友達」探しを始めるべきなのです。

 SMM_Labでは今年3月、ブロガーを中心としたモニターサイト「モニプラ」に登録中のユーザーを対象に「ネットショッピング」の利用状況を調査しました。(有効回答数:3330)
対象者が全て「なんらかのソーシャルメディア活動に関わっている」という点で、ソーシャルメディアマーケティングを考える際に有用だと思われるデータをご報告します。

Q:あなたはインターネットを利用して、どのくらいの頻度でお買い物をしますか? (単一回答)

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 月に一回以上ネットショッピングを利用するユーザーは全体の73%にのぼり、「ネットで買い物はしない」はわずか3%と、ソーシャルメディアユーザーらしくネットが買い物の手段として定着していることが伺えました。


Q:ネットショッピング関連サイトでアカウントを所有しているものと一週間に一度以上ログインするものを教えてください。(複数回答)

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※図表はクリックで拡大

 回答者3330人のうち、およそ80%の人がアカウントを所有していると答えた楽天では、一週間に一度以上ログインするという回答も約7割に達しました。一方、他のサイトでは半数以下であり、楽天の高いログイン率が目立ちます。ログインしなければ買い物が出来ない楽天に比べ、他のサイトではログインをせずに情報を閲覧するだけのユーザーが多いとも考えられます。
 また、アカウント所有が0と答えた人はおらず、一人あたりの平均アカウント所有数は2.5となっています。


Q:インターネットを利用したお買い物の一回の平均金額を教えてください。 (単一回答)

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 次に一回のネットショッピングでの平均購入金額を聞いてみたところ、3000円~5000円が37%、1000円~3000円が26%と5000円以下の回答が半数を超えました。ついで5000円~10000円という回答が23%となっており、昨年9月に富士通総研の調査レポート「インターネットショッピング2009」で公表された1回あたりの平均利用金額8,529円に比べるとやや低い金額になっています。これはソーシャルメディアに参加しモニター活動などをするユーザーが、情報リテラシーが高いためと考えられ、自身の試用やクチコミにより商品の適正価格を厳しく検討する「賢い消費者」像が伺えます。
 また、「送料無料になる金額」と答えたのが4%だったのは、少し意外な結果ではないでしょうか。送料よりもトータルの出費を考慮してお買い物をしている実態が垣間見えます。


Q:あなたはネットショッピングでどんなものを購入しますか?(複数回答)

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 本・CD、化粧品、ファッションが上位を占めていますが、お取り寄せ、スイーツ、日用食材をすべて併せると28%と実は「食品」を購入するユーザーが意外と多いことが分かります。3000円~5000円の回答が約4割に上った一回の平均購入金額と併せて考えると、日常の生活圏でリアルに買うよりも少し高級な食品がネットショッピングでの人気アイテムであると考えられます。


Q:インターネットを利用した買い物の1ヵ月の合計金額はいくらぐらいですか? (単一回答)

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 ネットショッピングの利用金額を1ヵ月合計を見ると、5000円~10000円、3000円~5000円、10000円~20000円の回答で約6割。総務省統計局調べによる平成21年の総世帯注(平均世帯人員2.49人,世帯主の平均年齢55.7歳)の消費支出は、1世帯当たり1か月平均253,720円となっていますので、2%~8%をネットショッピングで消費していることになります。

 不況を反映して世帯消費支出は減少傾向、ネットショッピングの平均利用金額も縮小傾向ではあります。しかし、デジタルサイネージやスマートフォン、Kindle・iPadなどのタブレット型デバイスなどの普及によって、ショッピングを取り巻くネット環境は今また急速に変化していますし、ネットスーパーの更なる進化、アメリカで注目されているソーシャルコマースなどの新たなビジネスモデルの登場によって、今後、ネットショッピングでの消費が家計の消費支出に占める割合はますます高まっていくのではないでしょうか?

前回は、ハウスウェルネスフーズ株式会社として、ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)にどのように取り組まれているかについてお聞きしましたが、今回はもう少し具体的な活動について詳しくお聞きしたいと思います。

--- 丸山さんは現在ウェブ全般をご担当されているのですね?

丸山:最初は営業で入ったんですけど、そのあと事務や商品開発、そして広告を経て、2006年からマーケティングです。その当時、社内でウェブはわからない人が多いという土壌があったものですから、そんなにお金がかからないならやってみればと、ウェブ制作についてほぼ全て任される状況になったのが、私にとってラッキーなことだったと思います(笑)。

--- C1000ブランドに関わる全ての部署をご経験なんですね。

丸山:そうですね、ですからC1000ブランドへの思い入れは大変強いです。

--- モニプラ(SMMプラットフォームサービス 旧称:モニタープラザ)を使ったSMMはどのような取り組みから始められたのですか?

丸山:公式HPの制作企画運営にモバイルサイトにプロモーションも、と結構バタバタしていたので、開始当初(2008年10月)はあまり活用出来ていませんでした。それぞれを上手く連動させる計画をしっかり練る必要を感じて、現在実施中の「げんきいろプロジェクト」を始める頃(2009年春)にようやく少しずつ始めたと言う感じです。

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--- モニプラを始めるとき、「こんな活動をしよう」とか「こんな風に活用したい」など、なにかお考えになったことはありましたか?

丸山:弊社では一通りのソーシャルメディアを使った施策を実施しているのですが、その中で当時「モニターブログ」というのが面白くないと感じていたんです。「商品を褒める」というポイントで画一的に書かれたブログが露出されているのは、バナー広告と変わらないようなイメージでとても残念でした。せっかく実際の商品を体験した人も「モニターブログはこう書くべき」みたいな暗黙の了解で、横並びの感想を書いているだけのような...。だから、どうせやるならお互いにもっと楽しい事をやりたい!と思いました。

--- 広告的には、単純に商品について沢山のブログが書かれて、それが沢山の人に見られるということだけを考えてしまいがちですが、もっと本質的なところを感じていらしたんですね。

丸山:私も自分でブログを書いていてよく感じるんですが、いざ書こうと思ったけどネタがないと困っている方が結構いると思うんですよ。だから、自分がSMMをやるときは、ブロガーさんがブログに書いて、お友達に読まれても恥ずかしくないネタを提供したいと考えたんです。今も、季節ネタのような、普通にブログに書いても良いなと思えるネタに、「バーゲン」とか「年末」とかちょっと検索にかかりそうな要素を加えたりして、とにかく書かれたブログを読んだ人に面白いと思ってもらえることを基準にテーマを考えています。

--- でも、それだと商品の露出が減ってしまいませんか?

丸山:もちろんタイトルに商品名を入れたり、素材として商品画像を提供したりはしますが、あまり商品露出を意識しすぎた形でやってしまうと、最初に感じたつまらなさが出てきてしまうと思うので...。

--- 2年前位の、いわゆるブログを広告媒体としてみていた考え方からは脱却してきたということなんでしょうか?

丸山:いろんなところで言っているんですが、私はブロガーの方々と「お友達になりたい」と思っているんです。

--- 「お友達」という表現はとても印象的ですが、企業にとって「お友達をつくる」という思考は、数年前では想像もつかないようなことですよね?

丸山:たとえば友達つき合いでも、今まで○○さんって呼ばれていた人に、○○ちゃんって呼ばれた瞬間って、距離がグッと縮まった感じがして嬉しいじゃないですか。それと同じことを目指していて、ブログを書いてもらう事はおつきあいのきっかけに過ぎないんです。ブログで感想を書き終わった瞬間に、商品の価値観が元に戻ってしまっては意味が無くて、そこから繰り返しお話をさせていただくとか、担当者である私の名前を覚えていただくとか、そういうコミュニケーションの中で徐々に距離を縮めていきたいと思っています。何度か参加してくれるうちに「担当のまるさん」って呼びかけてくれた、そんな変化に喜びを感じて、次への原動力にしています。ささやかなことですが、そういうところを私自身が楽しめないと続けるのは難しいのではないでしょうか?

--- SMMの担当者は「人が好きな事」、「コミュニケーションを楽しめる人」であることが重要ですね。SMMは、仕事だけれど「楽しく」なくてはいけない。でも従来の企業の考え方とは逆ですよね? 「あいつは仕事しないで遊んでる」なんて言われたり、ご苦労されていることもあるんですか?

丸山:そうですね...、「常に画面動いてるよね」みたいな事はいわれたりしますね(笑)。

--- ブログを読んでニヤっとしてしまったりすると、確実に遊んでいるようにしか見えないですよね(笑)。

丸山:でもそこで「これ面白いでしょ?」と社内も巻き込んで行くんです。仕事だけでやっていたら絶対に行き詰まりますし、やるからには楽しんでやりたいですよね。ブロガーさんと距離を縮めたいなんていっても、楽しそうじゃない人と仲良くなりたいと思う人はいないと思いますし。

--- 今お聞きしたのはまさに、「エンゲージメント」を目指す活動だと思うんですが、最終的な目標はお持ちですか?

丸山:お友達になったブロガーの方々と一緒になにかを作りたいですね。みんなでウェブコンテンツなんかを一緒に作り上げて、楽しさを共有出来たら嬉しいです。

--- 商品開発などはいかがですか?

丸山:商品開発自体は少し難しいと思います。そこまで企業活動の根幹に行ってしまうと、ブロガーの方も畏まってしまうと思うんです。気軽に雑談していた時はとっても面白いアイディアを持っている方でも、「商品化」というプレッシャーですごく優等生的な回答になってしまったりするのは、とても勿体ないしブロガーさんにも失礼だと思うんです。だから本業の、商品を作り出すところは自分たちで一生懸命考えて、出来たものへの率直な「感想」をいただきたいですね。
 本来の目的はその辺りにおいていたので、時々商品をテーマにしているのですが、その時集まってきたものは全て開発チームに渡しています。特に「使い勝手」などは、実際にお使いいただく方からの感想の中に問題点が潜んでいたりするので、開発チーム内でじっくり拝見しているようです。現在もブロガーさんのフィードバックからパッケージの改良を検討しています。

--- 逆にネガティブに書かれてしまったブログ記事が、社内で問題になってしまうことはないですか?

丸山:悪い事ほど報告するようにしているので、その瞬間は怒られる事もあります。でも良い事を
積極的に出力して掲示しているので、社内での印象が悪くなる事はないですね。

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--- 定量的な目標は設定されているのですか?

丸山:そうですね...現在は「ファン」と言うのが一つの指標にならざるを得ないので、まずは今2000人ほどいらっしゃるファンをC1000にちなんで4000人にしたいです。

--- シーが4だから4000人なんですね(笑)そうなると今度はその4000人の方々とのおつきあいの仕方が難しそうですね? とっても熱心な方とそうでもない方とはコミュニケーションの仕方が違ってくるかと思いますが?

丸山:それについてはまだ模索中なんですが、ソーシャルメディアで活動されている個人の方って、会社員とか主婦とか置かれている環境や立場はちがっても、自分が一人の人間として企業や社会に影響を与えたいというモチベーションをお持ちだと思うんです。それに対する反応や評価が自分に返ってきた時に、「言ってよかった」「書いてよかった」と思っていただけるのではないかと思うので、「自分が発信したことに価値がある」ということを感じていただきたいと思っています。だから、2000人が4000人になっても「あきらめなければ自分もフォーカスされる」という場を上手く作っていきたいですね。

--- それはもう、単純な利害関係ではない、心理学の世界ですね。でも丸山さんお一人だと深い「絆作り」には限界があるのでは?

丸山:たとえば弊社商品の特性上、薬事法に違反してしまっている方には全部メールをお出ししているのですが、皆さんものすごく真面目に反応してくださって、「受け入れてくれる土壌」を感じるんです。たとえば、この土壌を上手く活かして、一対一のコミュニケーションをオープンにしたら、周知出来る事も多いと思いますし、「なんだか楽しそう」という熱量を増勢させることも出来るのではないかと考えています。

--- ソーシャルメディアでは新しいテクノロジーが次々に出てきていますが、そこに期待している事、取り組んでいきたいものはありますか?

丸山:新しいテクノロジーによるツールが増えることによって、伝播する可能性は広がっていくと思います。モニプラでもTwitterやYouTubeを利用した企画が可能になったので、広がりを見ながら少しずつ研究していきたいと思っていますが、現段階ではまだ、Twitterの世界観の中でも、同じように面白いことが出来る自信がないので、今しばらくは「ブログ」を中心に「絆作り」を頑張っていこうと思っています。

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丸山佳代氏 略歴
ハウスウェルネスフーズ株式会社
営業企画部 販売企画グループ 主任

1991年営業として入社。
お客様相談室、商品企画を経て1999年より自社ホームページ担当となる。
その後現在まで、WEBプロモーション及び自社サイト運営に従事。

インタビュアー:中村壮秀(アライドアーキテクツ株式会社代表)

ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)に積極的に取り組まれている企業の担当者に、現場でのSMM活動の実際についてお聞きします。
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 今回は、「C1000」ブランドを中心にした機能性飲料を販売されている「ハウスウェルネスフーズ株式会社」(以下ハウスウェルネスフーズ)の丸山佳代氏です。

--- まずは、ハウスウェルネスフーズのマーケティング活動の基本方針について教えてください。

丸山:ハウスウェルネスフーズは、1957年より武田薬品の食品部門の一翼を担っていた武田食品の全事業を継承し、2006年に誕生しました。その際にメインブランドであった「C1000」が、長らく「C1000タケダ」として認知されていたため、実際「偽物なのではないか」との声がお客様相談室に届くほど、社名とブランドが乖離した存在になってしまったんです。
 そこで社名変更後、社名の露出認知とともに「C1000」ブランドの親和性を高める事を、マーケティング活動のメインミッションとしています。

--- 「ブランド」を再構築するためのマーケティング活動ですね。実際には、どういったメディアを使っていらっしゃいますか?

丸山:武田食品時代は、テレビを中心として新聞以外のマスメディアをすべて使用していました。ネットはホームページだけでしたね。ハウスウェルネスフーズに変わってからは、紙媒体はほとんど使わなくなり、ラジオも縮小して、その分をネットでの施策に充てる形になりました。

--- そうすると予算の総額自体はあまり変わっていらっしゃらない?

丸山:そうですね、むしろ減ってきていると思います。

--- 減少傾向の中で、会社から求められるものというのは変わってきていますか?

丸山:やはりマスメディアが響きにくいところへのネットの効果に、期待されるところは大きいですね。メディアパワーの強い大手企業と対抗していかなかればならない弊社のような企業は、広告の絶対量で勝負するより、深く響くプロモーションという戦略に立って、お客様との直接のやりとりの中で関係性を深める施策の必要性を強く感じて、SMMへの取り組みを始めました。

--- 一方で、SMMだけですべてのマーケティング活動を完結できるわけではないと思うのですが、マスメディアを使った広告とのバランスや使い分けについてはいかがですか?

丸山:テレビCMをメインとしたマスメディアへの広告出稿のボリュームは、あまり変わっていません。ただ、テレビCMが訴求しづらい層のお客様へのリーチを補完する意味で、ネットの割合は増えていると思います。

--- 現場の担当者である丸山さんがマーケティング活動で目指しているイメージはありますか?

丸山:最終ゴールというわけではないですが、「C1000タケダ」と言われなくなる事です(笑)。
 私は武田食品時代から「C1000」の広告にも携わっていたのですが、その当時はかなり意図的に「C1000タケダ」と認知されるような戦略をとっていたんです。それはかなり効果があったと思うんですが、今となっては少し厳しさを感じていますね...。

--- 「C1000タケダ」ではなく、「C1000」と呼ばれる事が第一のゴールだと?

丸山:「C1000タケダ」というイメージが残ったままでは、私たちの「変化」をお客様に受け入れられていないということだと思うので、現在のハウスウェルネスフーズと「C1000」を、ワンセットで認識していただく努力をしていきたいと思っています。

--- ブランド認知の再構築をテーマにSMMの活動を始められたのが、2008年の10月ですね?

丸山:モニタープラザ(SMMプラットフォームサービス 現:モニプラ)に出展したのは2008年10月ですが、準備期間のようなものがあって、実際に本格的に活動を始めたのは2009年の4月ですね。

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--- これまでの活動で「C1000」ブランドの認知は向上しましたか?

丸山:高まってきていると思います。2006年当時、100%「C1000タケダ」だったのが今は30%ぐらいの感覚でしょうか...。

--- 一年弱で「C1000」の認知が70%に向上したというのは、凄いスピードですね!

丸山:武田食品は親会社が薬品会社だったこともあって、「C1000タケダ」は薬効への期待感がブランドの大きな価値軸だったんです。ブランド名から「タケダ」を外すことによって、「ビタミンC」のイメージまでも失ってしまわないように、「Cと暮らそう」というメッセージコピーを掲げているのですが、こちらはまだ伝えきれていないですね。徐々に伝えていきたいと考えているので、そういう意味でもSMMは大事な施策だと考えています。

--- 広告はお金を使って広く浅く、ネットはお金をかけずにじわじわ深くですね。
 SMMは時間がかかり、効果が見えづらいと言われますが、社内での評価はいかがですか?

丸山:お客様を追いかけてCMを流し続けても、認知度が急激に上がるかというとそうでもない。CMも影響力という点では計りづらいと思いますよ。
 その点、ウェブプロモーションは反応がとても早いし、それがどんどん好意的に変化していく様子が見えて、ある意味分かりやすいです。係る費用も大分違いますしね(笑)。

--- 最終的には「売上」にどう影響していくかを求められるのでは?

丸山:そこは非常に課題で、確かにSMM活動は「売上」には直結しないと思います。
 ただ、「C1000」は販売チャネルのメインがコンビニエンスストアなんですが、コンビニエンスストアに飲み物を買いに行く時、「○○を買おう」と具体的な商品を思い浮かべている方は少ないと思うんです。棚の前で「何を買おうか」と思った時に、値段やオマケ以外の選択基準があるとしたら、それが「これまでの心の結びつき」なんじゃないかと思います。消費者との距離を縮め、そこに「絆」をつくる、それこそがSMMをやる意義だと思っています。

《次回へつづく》

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丸山佳代氏 略歴
ハウスウェルネスフーズ株式会社
営業企画部 販売企画グループ 主任

1991年営業として入社。
お客様相談室、商品企画を経て1999年より自社ホームページ担当となる。
その後現在まで、WEBプロモーション及び自社サイト運営に従事。

インタビュアー:中村壮秀(アライドアーキテクツ株式会社代表)

--- 日本初のソーシャルメディアリードとしてご活躍の熊村剛輔氏に、ソーシャルメディアマーケティングへの取り組みについてお聞きしています。
 ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)を本格的に実践していく上で、ツールやプラットフォームの今後の進化についてはどのようにお考えですか?
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熊村:突き詰めていくとソーシャルメディアというのは、ツールでしかないのではないでしょうか。結局、ブログもTwitterも、SNSにしてもツールでしかない。人が集まって交流するためのツールとしては、以前から「オンラインコミュニティー」がありましたが、これは自分達で構築するのが難しく、専門家の手が必要でした。しかし、mixiが出てきた事で、誰でも簡単に出来るようになった。それだけの変化なんだと思うんです。
 つまり、ツールとして「ソーシャルメディア」が現れている以前と以後では、人の考え方自体は、実はあまり変わってない。ネットワークを横広がりでずっと広げていきたい人と、縦に深めていきたい人と言うのは、別にツールが変わったからといってその指向は変わらないのだと思います。
 たとえば欧米では、横広がりでネットワークを広げて行く為に、FacebookLinkedinなどのSNSを活用する人が多いのですが、結局の目的としては、自分達が転職に有利な状況を作るためとか、起業するときにビジネスパートナーを探したいとか、あるいはスポンサーを見つけたいとか、そういったネットワークやコネクションを広げていくために使っている。だからソーシャルメディアがあろうとなかろうとその行動は変わらない。
 日本でも本質的には同じだと思います。日本の場合はどちらかというとリアルな人間関係を深めていく為に、ソーシャルメディアで活動している方が多いと言われていますが、別にmixiがなかったとしても、その行為を止めるかと言えばそうじゃない。根底で望んでいるコミュニケーションの形態というのは、実はソーシャルメディアによるものではないと思うんです。
 では、なぜ今ものすごく使われているソーシャルメディアと、使われていないソーシャルメディアがあるのかというと、その差はもう元々持っている根源の欲求が満たされるか否かだけだと思います。

--- 企業側は大変ですね。根源的な部分は変わらずとも、テクノロジー的にはキャッチアップし続けていかなくてはならないし、それぞれに応じた対応を求められていくわけですから。

熊村:そうですね。やはり自分でしっかりと一ユーザーとして、ソーシャルメディアの中で動いている人でないかぎり、難しいのではないかと思います。良くあるのが、ソーシャルメディアのユーザーではない人たちが、SMMの施策を考えてしまうパターン。表面だけ分かったような感じで始めてしまって、実際にはあまり良く分かっていないので、形にしてみるとこんなはずではなかった、というのが多々ある。それは、やはり自分で実際に体験していないからだと思います。釣りに関する本を沢山、一生懸命読んだからといって、いきなり海釣りに挑戦して大物が釣れるかといったらそうじゃないでしょう(笑)。

--- 確かに企業マーケターにとって今は、色々な課題を突きつけられている状況だと思います。まずは実際に使ってみなければ始まらないということなのでしょうが、使っていない人もいっぱい居ると思うんですよ、Twitterやってない、ブログやってない人。そういうマーケターに対して御社内ではどのように伝えているのですか?

熊村:「SMMをやるのならばやはり、まずは自分でしっかり使ってみなさい、いずれやらなくてはならない時が必ず来るから」と伝えます。今の段階ですと、別にやりたくなければやらなくてもいいという選択肢もあるかもしれないですが、僕はおそらく、遅かれ早かれ、そうは言っていられないことになると思うんですよ。

--- それはマーケターとしてということですか? それとも一個人として?

熊村:まずは一個人としてです。一個人として、周囲でもっとソーシャルメディアが使われるようになったら、やらざるを得ない状況がきっと来る。そしてその時、マーケターとして人の先を行きたいのなら、今のうちからやっておきなさいということ。人の先を行っておかないと、先行で動けるメリットというものはないと常々語っています。
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--- アメリカだと国土面積や国内時差のこともあって、「人に会う」ということに比較的時間や手間がかかるから、こういったものへの欲求が凄く強いと思うんです。そういう意味では、日本ではそうした欲求が少し弱いような気がしますね。

熊村:そうですね、日本ではまだ、切実さを感じている方があまり多くないのかもしれないですね。ただ、遅かれ早かれ切実な問題になってくると思います。自分の身の回りの人がみんな、Twitterでバシバシ「ツイート」し始めた時を考えてごらんなさい、ということです。そうなった時に自分がそれを知らなかったら、そこに対して「どうやってマーケティングするの?」という話になる。実際にソーシャルメディアの中に身を置き、そこで交わされている情報の内容、流布する状況、誤報への対応、そうしたものを間近に見ていく中でようやく、ソーシャルメディアの情報は玉石混淆なんだという事が、実際に自分の目で確かめていけるようになると思うんですよね。そういうリテラシーを身に付けていないと、これからSMMを活用していくのは結構厳しいかなと思います。

--- 確かに今からちゃんと「ソーシャルメディア」での"泳ぎ方"を知っておかないと、玉なのか石なのかということを見極める力がつかないですよね。

熊村:今、ソーシャルメディアを使っている人というのは、多分まだそんなに多くはない。実際にターゲットとしているお客さまでは、使ってない人の方が多いかもしれないです。しかし現実問題としては、ある世界の20大ブランドで検索をかけた時に、その結果の約1/4はすでにソーシャルメディアでのポストだという事実はありますから。そういう現実をまずしっかり知ってもらうところから始めなくてはいけないと思っています。
 だから今回、SMMのフレームワークを作るにあたっては、まず最初に「ソーシャルメディアを知ってもらう」ことから始めたんです。全3部構成のまず最初に、先程の「20大ブランドの検索結果に於けるソーシャルメディアの存在感」などのデータをはじめ、予算規模だとか、市場規模だとか、現在のソーシャルメディアの状況などを、良い点悪い点すべてきちんと教えて、まず理解してもらう。それを踏まえた上で、「SMMとは?」というかなり概論的なところから、「具体的に進めていくに当たってはどこに気をつければいいのか」というところに落とし込んでいって、一番最後に「企業としてSMMを実施していく際に、必ず守らなくてはいけない約束事」で結んでいます。

--- そういうフレームワークの中では、企業のマーケティング担当者に問われるスキルというのも、確実に多様化してきているんじゃないですか? 今は、マーケターにとっても大変革の時で、ここで変われた人と変われない人とでは、10年後、立場や、仕事の内容や、給料など、様々なことが凄く変わる気がしているのですが、これからのマーケターに対してアドバイスはありますか?

熊村:まずは、ソーシャルメディアが広がることで、これまでよりも安価に、これまでよりも手間をかけることなく、顧客の声をダイレクトに聞く事が出来る環境が整い始めてるという事を理解しなくてはいけないと思います。
 それまでは代理店というフィルターを通していましたが、ソーシャルメディアの登場によって、消費者と企業との間のダイレクトコミュニケーションの機会が増えてきているわけです。直接的なコミュニケーションだからこそ、話し上手なだけではなく聞き上手でなければならないと思います。そのためには、多方向にアンテナを張り、自分達のターゲットが本当に求めているものは何か、何を思い、何を考えているのかをしっかりと見ていくところから始めるべきなのです。
 僕はよく、「SMMというのは、自分達でブログを立てたり、Twitterアカウントをオフィシャルで作ったりするだけではないですよ」と言うのですが、別に、コミュニケーションをアウトプットする場をソーシャルメディアに求めなくても、ソーシャルメディア上にある様々な言葉、会話といったものを吸い上げて、それらを何らかの形で、改良改善、あるいはイノベーティブなものに変化させていくことが出来るのであれば、それは立派なSMMだと思っているんです。

--- 意外にそちらのほうが本質的だと言う人もいますよね?
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熊村:突き詰めていけばいく程、SMMとは、当たり前のことを当たり前のようにやることに徹するというのが一番のテーマなんだと感じます。なのになぜ、企業のマーケターという立場になった瞬間に、その当たり前の事が出来なくなってしまうんだろうかと自問自答しています。普通に個人としてやる時は、当たり前の事が出来るはずなのに、なんで「マイクロソフトの熊村さん」になった瞬間に、当たり前のことに一瞬躊躇してしまうんだろうと悩む時があるんですよ。

--- 企業人として働いている人はみんな、そういう部分はありますよね。

熊村:昨夏、SMMのフレームワークを書いているときに、「なんでこんな当たり前のことを、わざわざ書く必要あるんだろう」と悩むことが多々ありました。しかし一方で、「見直す良い機会かな」とも思いました。アメリカでは確か、Twitterがある程度普及し始めて以降、急速に企業がソーシャルメディアに関するガイドラインを制定し、公開するのが盛んになったのですが、それを一通り読んでみると、「嘘はつかない」だとか、「人の悪口は言わないだ」とか、「間違えたらちゃんとごめんなさいと言いましょう」とか、「変に強がって意地張っちゃダメですよ」とか、極論そういう事ばかりが書かれているんですよ(笑)

--- 幼児教育に立ち戻るみたいな感じですか?(笑)

熊村:本当にそうです。小さな子どもたちを諭すときに、たとえば「誰々ちゃんの悪口言っちゃだめ」とか「嘘をついちゃダメ」というように諭すコトがあるかも知れませんが、これはソーシャルメディアのフレームワークやガイドラインとあまり変わらないのでは、と思う時が度々あります (笑)

--- 大人達の自浄作用が始まってるのかもしれませんね。

熊村:確かに、クライアントとエージェンシーとコンシューマー、カスタマーの関係が変わりつつある中で、自浄作用が働いて、今それがどんどん顕在化しつつあるところなのかもしれないです。

--- まさに20世紀に大量生産、大量消費の時代に汚れきった垢を、今落としつつあるという感じでしょうか? ソーシャルメディアは、たとえ手法が稚拙だったとしても、変わろうとしている人に対して温かいですから、この流れをいち早く理解して自浄出来たところが、今後強くなっていくのかもしれませんね。

熊村:ソーシャルメディアに最初に参入していく、いち早く参入していくことが評価されているのは、おそらくそこにあるんじゃないでしょうか。顧客の視点からみるとまだ、「やっと企業が素の状態でコミュニケーションしてくれる気になった」という部分の評価が大きい。

--- ある意味、ただ「正直者であればいい」今は楽かもしれませんね。

熊村:確かに楽だと思います。だから早く始めた方が良いんじゃないかな(笑)

--- そうなると、ソーシャルメディア時代の企業というのは、そこで働いている人たちが、ソーシャルメディアにしっかりと向き合おうとしているかどうかが大きなポイントになってきますね。

熊村:実際のところ、今、ソーシャルメディアで存在感を出している企業では、その担当者がすごく純粋で、熱い方であるケースが多いんじゃないかと思います。結局、SMMでは、人間的な本質が問われてくるということなのではないでしょうか。

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熊村剛輔氏 略歴
マイクロソフト株式会社 セントラル マーケティング本部
デジタル マーケティング & アナリティクス グループ
オンライン マーケティング マネージャー
ソーシャル メディア リード

 幼少より海外で過ごし、90 年代半ばから後半にかけてプロのサックス奏者として活動後、
IT 業界へ転身。
 リアルネットワークス株式会社で RealPlayer のプロダクトマーケティングおよび RealGuide、RealNews のエディター・イン・チーフを務め、コールマン・ジャパン株式会社で Web マーケティング全般および E コマースを統括したのち、2006 年マイクロソフト株式会社に入社。2009 年より「ソーシャル メディア リード」として、ソーシャル メディア マーケティング施策全般に携わる。
 
インタビュアー:中村壮秀(アライドアーキテクツ株式会社代表)

--- 日本初のソーシャルメディアリードとしてご活躍の熊村剛輔氏に、企業としての
ソーシャルメディアマーケティングへの取り組みについてお聞きしています。IMG_2387.JPG
 マイクロソフト社では昨年夏、熊村さんの指揮によりソーシャルメディアマーケティングへの、総合的な取り組み方をまとめた「バイブル」と、その思想を基にしたフレームワークが策定されましたが、それらを基に今後スタートされる本格的なソーシャルメディアマーケティング施策は、どのような取組みになりますか?

熊村:本来、ソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)には「バズ & バイラル」型と「アドボカシー(信頼を得る為の支援)」型があると思うのですが、まず、SMM=バズ & バイラルのように広まってしまい、ツールありきな状況になってしまっていることで、SMMの本質が誤解されているのではないかと危惧しています。
 これはもうホントに、自分も含めて、今までソーシャルメディアの世界の中に居た人たち、全員に責任があると思っていますが、新しいツールが出るたびに、あたかもそのツールを使えばバズ & バイラルが起こせるかのような騒ぎになる。Twitterなんてまさにそうですよね。「やれ、Twitterというものが出てきました、Twitterが広がってきました、Twitterであんな事やこんな事が
出来ます」と語られているのはホントにバズ & バイラルな内容ばかり。

 これはブログの時もそうでした。そしてセカンドライフの時もそうでした。いつの時代も、必ずなんらかのツールが出てきては、バズ & バイラルの起爆剤としてもてはやされる。確かに、バズ & バイラル型の方が、わかりやすく、華々しく派手で、効果も見えてくるし、なにより企業にとっては、効果指標が作り易いように感じるんですよね。でも実際は、バズ & バイラルはそう簡単に起きませんし、起きたとしてもその効果は一次的なものに過ぎず、SMMの本質ではないと思うんです。言ってしまえば、毎回競馬で大穴張ってるようなもの(笑)

--- もうちょっと堅実的にやる方法があるんだ、ということですよね? たとえば、ENGAGEMENTdb(http://www.engagementdb.com/)で、ソーシャルメディアを上手く利用した企業が、売上を18%伸ばしているというような調査結果を見ると、「アドボカシー」型が徐々に成功しつつある証明なんじゃないかなと思うんですが?

熊村:そうですね、これからは本当に「アドボカシー」が重要視されていくと思います。長引く不況で消費者がお金を使わなくなっている以上、企業が引き続き成長していくためには、他社様のシェアを奪っていくような方向も検討しなくてはいけない。そんなとき、消費者との直接的なエンゲージメントを高めていくことで、それまで他社の顧客だった方にも「こっちも見てね」といったように、興味を持っていただけるようなソーシャルメディア活動が出来たら、それはそれで非常に成功している例になると思います。
 傍目には目立った結果にならないかもしれないかもしれませんが、それでビジネスプロセスが改善されたとか、商品や自分達の持っているプロダクトがどんどん性能のいいものになったならば、それは立派な成果だと思います。直接的な売上になるならないを別にして。

--- それでは、アドボカシー型SMMに先行者利益がある思いますか?

熊村:SMMにおいて先行者利益的なことは確かにあると思います。SMMは今はまだ、ある一線を踏み出すかどうかをみんなが悩んでいる状況で、まずこの一線を越える事がかなり評価されるのでは? 企業が消費者と同じ土俵に立ったことを明確に宣言する事だけで、今はまだかなり評価される時期だと思います。その上で、もしもその取組みが多少稚拙であったとしても、インターネット上に残って行く活動の蓄積が足跡として、後々検索されて沢山の人に見られて行くので、「積極的に消費者と向き合っている」というイメージを作るのに、意外と影響が大きいのではないかと思います。

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--- SMMの導入に戸惑っている企業は何から始めるべきだと思いますか?やはり傾聴戦略?

熊村:傾聴戦略だと思います。しかし「何から始めましょうか」と言っているうちは多分、まだ必要とされていないのかもしれないですね。自分達のマーケティング戦略における課題があった時に、その課題を解決する道具の一つとして、ソーシャルメディアが見いだされるというのが、本来の流れであると思っていて、最初から「SMMを始めよう」「で、始めようと思ったはいいけど、なにからやっていこう」と考えていくのは、正直結構危ないのかなと思います。そういう取組みだと多分続けられないでしょうし。
 たとえば、本当にもう、継続的に顧客とのコミュニケーションやエンゲージメントを高めていかないと、2年後3年後の自社製品のシェアに響いてくるというような切実感を持っている人たちが、じゃあ今からソーシャルメディアを使って少しずつエンゲージメントを高めておこうね、というような形で始めるべきです。

--- 現場レベルでは理解出来ると思うのですが、それを経営層に伝えて行くにはどうしたらいいでしょう?

熊村:個人的にジョシュ・バーノフ(フォレスター・リサーチ『グランズウェル』著者)に、経営層に伝えていくにはどうしたらいいんですかと聞いた事があるんですが、彼は、新規のクライアントに会う時は、出掛ける前にソーシャルメディア上でその企業がどのように語られているか調べて、持って行くんだそうです。そして、いきなりミーティングの最初に「あなたの会社は今、ソーシャルメディア上でこのように語られています」と見せるんだそうです。それでまず不安感や危機感を持ってもらう。現状を見てもらって、深く考えるきっかけを作ってもらうんだとおっしゃってました。

--- 確かにそうした定性的なほうがいいでしょうね。感覚に訴えるというか。確かにこれを無視したら2年後こうなるな~みたいものを見せられたら経営者は不安になるし、「あぁ、あそこはもうやってるのか、我が社も遅れてはいけない」という感じになりますね(笑)

熊村:なので、僕も常々、それに関する案件があるのかないのか全く別にして、自社に関して気になるものというのは、ソーシャルメディア上でどう語られているか、継続的にチェックを入れています。そして、それについてなにか相談された時に、「実は今、こういう風に出されていますよ」「こういう風に出てきていますよ」というものを、サッと見せるような用意をいつもしています。

--- ちなみにそれはどうやってチェックされているんですか? なにか上手いチェック手法があるのですか?

熊村:チェックするツールはしっかりとした有料のものを使ってますよ。やっぱりそのメジャメント(測定)に関しての予算は、シビアに考えておかないといけないです。

 ソーシャルメディアに限らず、オンラインマーケティングをする時によく、ウェブサイトやキャンペーンサイトを制作するだけにもの凄くお金をかけてしまって、その効果測定をどうするかという段階になって、そのツールに対してなかなか予算を割り振ることが出来ないとか、そこまで割り振ったはいいけれど、その後継続して最適化させるサイクルに持って行く為の予算がなかった、というミスに陥りがちです。一番悩ましいのは、失敗したとわかっているのに、修正するための最適化予算がないまま最後まで行ってしまって、なんかすごく不完全燃焼で終わってしまうパターン(笑)。別にこれはSMMに限らず、オンラインマーケティングというか、マーケティング活動全般で当たり前の事だと思うんですが、自分達が世に出したものが、今どうなっているかということを把握するためのコストと、把握した結果それをどう変えていくかというコストを、ある程度最初のうちにしっかり検討しておくべきだと思います。

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--- SMMは本質的なところになるとメジャメント(測定)というのが本当にむずかしいですね。

熊村:理想論を言ってしまうと、SMMだけを切り離して考えてしまうと、かなり難しいと思います。SMMだけを単体で考えてしまうと、その施策に対してなんらかのROIが求められてくるのは避けられない。そうすると「書かれたブログのPVはどうだった」といった話になってきてしまう。だからSMMをマーケティング施策の中の一環として考えて、これはこれだけパフォーマンスが出たから、たぶん結果的に全体にも役に立っている、と考える事が出来たらいいなと思います。

--- そうなると、人がかける時間やシステムにかかるコストなどを、どこまで許容するかになるんでしょうか?

熊村:その意味では、費用対効果を見るのではなく投資対効果で見るのが大切ですね。
 これは今回のフレームワークを作る中でもかなり重点をおいたところなのですが、費用対効果で考えてしまうとなにも出来なくなってしまうから、投資対効果で見た方がいいということは注意しています。たとえば、PVであるとかクリックレートやコンバージョンレートのようなものは、基本的に費用対効果じゃないですか。かかった費用に対する明確な指標として、CTRであったりとかCVRがあがってくるわけですが、まずSMMをその切り口で評価するのは止めましょう、ということです。
 投資対効果でしっかり評価していくためには、中長期的に考えなくてはいけないのですが、実際には、ブログでの会話量が変動すると、オンラインでの売上はどうなるかというような指標(KPI)と、コミュニケーションのインデックス(KCI)に分けて考えて、KPIとKCIというものの相関性を見た上で評価していきます。そして、そういったことを観測していきながら、ある程度の時間をかけて独自の指標を作っていくべきだと考えています。

--- 投資対効果という言葉が出て来たんですけれども、SMMに対する投資額というのは具体的には、どのぐらいの規模なんでしょうか?

熊村:それは案件によって異なると思います。たとえば、一つの製品を扱うにしてもその製品が今、どのフェーズにあるかで変わってくると思うんですよね。たとえば、売り出し始めましたという時と、売り出し始めてある程度キャズムを越えて、もっと需要を伸ばさなきゃいけないという時と、キャズムも完全に越えて需要も伸びた後、更にこれを浸透させていくにはどうするかという時、一つの製品にしても色々な形でのマーケティングの仕方、プロモーションの仕方があると思います。その時々で投資対効果の投資の割合は変動するんじゃないかなと思っています。

--- SMMに対する投資を数字でないもので考えるとしたら?

熊村:多分それは企業文化によっても変わってくるんじゃないかと思いますね。本当に純粋にお財布から出て行くお金だけをもって投資と見るのか、あるいはそこに関わってくる人間に伴う時間だったり、労力だったりまでを含めてシビアに考えていくのかは、おそらく企業の経営スタイルによっても変わってくるとは思います。ですから結局平たく言ってしまうと、効果指標というのは自分達で作るしかないってところがやっぱりあると思います。SMMが、これまでのオンラインマーケティングと何が決定的に違うかというと、これまではいわゆる費用対効果という面での共通指標が、明確に存在したというところだと思います。
 たとえばその共通指標と言うのは、PVやあるいはリピート率、またはコンバージョンレート、というように様々な指標が確立されていますし、その指標は何らかの形で見る事が出来ます。それはもう共通指標として認知されていて、可視化出来るような状況になっていれば、アクセス解析ツールなどを使えば、極端な話、誰でも見る事が出来ます。ですがSMMの場合は、そういった共通指標は無いという認識からまず始めないといけないなと思うんです。そして、無いまま始めていく訳にはいかないのだから、自分で自分にあったものをちゃんと作りましょうということですよね。

--- 将来的にはSMMにも共通指標が出来るんでしょうか?

熊村:無責任に言っちゃうと出来ると思いますよ。ただ、万人の為の共通指標にはならないとは思うんですけども。業界毎だったり、企業規模だったり、そのビジネスに応じた独自の指標という形で、ある程度類型化されたものにまとまってくるんじゃないかなとは思います。

《次回へつづく》

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熊村剛輔氏 略歴
マイクロソフト株式会社 セントラル マーケティング本部
デジタル マーケティング & アナリティクス グループ
オンライン マーケティング マネージャー
ソーシャル メディア リード

 幼少より海外で過ごし、90 年代半ばから後半にかけてプロのサックス奏者として活動後、
IT 業界へ転身。
 リアルネットワークス株式会社で RealPlayer のプロダクトマーケティングおよび RealGuide、RealNews のエディター・イン・チーフを務め、コールマン・ジャパン株式会社で Web マーケティング全般および E コマースを統括したのち、2006 年マイクロソフト株式会社に入社。2009 年より「ソーシャル メディア リード」として、ソーシャル メディア マーケティング施策全般に携わる。
 
インタビュアー:中村壮秀(アライドアーキテクツ株式会社代表)

IMG_2401.JPG--- 今回は、マイクロソフト株式会社で日本初のソーシャルメディアリードという、ソーシャルメディアマーケティング戦略の統括責任者としてご活躍の熊村さんにお聞きしたいと思います。ご経歴が大変ユニークなのですが、プロのジャズミュージシャンだった熊村さんがどういう経緯でインターネット業界にお入りになったんですか?

熊村:90年代の半ばから後半にプロのミュージシャンとして活動していまして、その時に自分で情報を発信していけるというところにすごくインターネットの可能性を感じました。それまではメディアを通じてでしか発信出来なかったもの、個人の作品であったり、インフォメーションであったりという、メディアが取り上げてくれなかったような小さな情報をどうやって外に出せるかに強い興味がありました。で、気付いたらいつの間にかインターネット業界に(笑)

 リアルネットワークスやコールマンといった企業を経て現在に至るのですが、1人で二役も三役もやらせてもらえるような環境だったことが今とても役に立っていると思います。たとえば、ウェブサイト一つ見るにしても、大きい組織になると完全分業制になったりしますが、システム構築の提案からプロジェクトをマネージメントしつつ自分でコーディングをしたり、併せてコンテンツの編成・作成・編集も自分でやりました。実は宣伝やマーケティングの経験はオフィシャルにはないんですが(笑)、おそらく自分がウェブマーケティングというものに関わって行くにあたって、システムを作るといった上流の方から、コンテンツを更新するといった現場の作業までの行程を経験して来たというのは大きな経験だったと思います。

--- ソーシャルメディアリードというのは部署的にはどちらに属しているんですか?

熊村:僕自身が籍を置いているのは、企業サイトを運営している部門で、企業サイト全般ガバナンス的な部分を主管している部署です。

--- 現在、ソーシャルメディアマーケティングの教科書的に読まれている「グランズウェル」にも、どれだけ経営層を巻き込めるかということが大事だ書かれていますが、最終的にソーシャルメディアマーケティングを誰が担当すべきかは、既存の組織の中ではなかなか難しい問題ではないですか?

熊村:そうですね。特に、大企業になると、セクション毎に業務だったり役割がきっちりと分かれている為、ソーシャルメディアに取組むにあたって全部をきちんと考えなくてはいけない、そうなると新しく専門部署というものを明確に設けなければいけないという組織論になってしまって、「じゃあウチでは無理だよね」って言う形で終わってしまうケースが実はほとんどだと思うんですよ。だからむしろ、小回りの効く組織の方がやり易いのかな、とは正直思います。

 ただ今回、僕がマイクロソフトという企業の中でソーシャルメディアマーケティング(以下SMM)をやらせてもらえるような背景は、やはりSMMというものにキチンと取組むべきという機運が日本だけでなく全世界的に高まってきたというのが追い風だったと思いますね。

--- 熊村さんの活動が広く伝わると、いわゆる大企業も変わるかもしれませんね...

熊村:だといいんですけどね、ホントに。でも今、組織の中で自分が本当に意思決定者かと言ったら、実はそれほどの立場でもないんですよ(笑)ただ、最終的な意思決定を自分がするにせよ、しないにせよ、何らかの形で現場のスタッフたちのアドバイザーでいられるということは、大きいかもしれませんね。「なんかあったらこの人に聞けば良い」という形で、ソーシャルメディアに関する社内の窓口が集約されているのがいいことだと思います。

--- ソーシャルメディアリードとして、実際にはどんな活動をされているんですか?

熊村:今はまだ社内コンサルタント的なところが大きいです。というのも、フレームワークを作り始めたのが昨年の夏なんです。三ヶ月かけて作ったフレームワークを10月一ヶ月かけて、ネット活動に関わる可能性のある、社内の様々な部門のマーケターを対象にトレーニングしました。当初20、30人を対象に1,2回を予定していたんですが、予想外に希望者が殺到しまして、結局3回になりました。さらに関係性の深い部署には、具体的な施策に応用していく為のケーススタディーや、直近の課題に対するアプローチを考えるワークショップなどをやっています。その段階が今もまだ継続中です。

--- マイクロソフトとしての具体的なSMMというのはスタートしているのですか?

熊村:これまでもブロガーイベントを含めSMM的な活動はやってきましたが、今回こうしたフレームワークを作成し、それをしっかり浸透させた結果というのは、今後出てくると思います。

--- そうすると今後はマイクロソフトの社員が、全社的にソーシャルメディアに関わっていく形になっていくんでしょうか?

熊村:それは案件・施策によってだと思います。今回フレームワークを作って行く中で、様々なシーンを想定したんですが、ソーシャルメディアに個人として参加するのか、組織として参加するのか、というところはかなり考えました。また、SMMを、しない方がいいことも実はあるんですね。要は、SMMに取り組んだ方が良い時と、悪い時をはっきり決断する事が大切なんです。

--- 熊村さんがSMMをすべきではないと判断するのはどんなケースですか?

熊村:これもケースバイケースで一概には言えませんね。例えば既にユーザーとのリレーションがしっかり出来上がっている場合、特定の顧客との密な関わりが取れているといった、絶対的な状況が出来上がっている場合は、むしろお金とリソースを割いてまでソーシャルメディアを使う必要はないかもしれませんし、シビアに考える必要があると思います。

--- 必要性に応じて優先度を変えるという判断ですね。

熊村:そうです。だからSMMだけを切り離して考える事は出来ないと思っていて、全体の大きなマーケティング施策の一環として、ソーシャルメディアをツールとして使うか、使わないかだと思うんですよ。

--- ソーシャルメディア活動を始める時に参考にした海外の企業例はありますか?IMG_2417.JPG

熊村:海外企業でも参考にした事例はありますが、「鵜呑み」にするのは危険だと思います。今回、しっかりとしたSMM活動のフレームワークを作って行く際に、一番注意した点はそこなんです。海外の事例がそのまま日本で本当に上手く行くかどうかわかりませんから。「これアメリカだから上手くいったんじゃないの?」ということって結構あると思うんですよ。

 日本のインターネットをその環境や文化も含めて考えた時に、果たして「自分たちで情報を発信しよう」と積極的に考えている人がどれだけいるんだろうかという部分で、やはりアメリカとは大きく異なっていると思うんです。日本では、自分の意見をしっかり持って、その意見を流布させる為にブログを活用している人ってあまり多くないのではないでしょうか?意外と二次情報が多いという気がします。

--- そう言った意味では、今回の熊村さんのブログは、一次情報を作ろうとされていますね?
(熊村氏は現在、自身のブログ『life is so...』で今回の「バイブル」作成に関するエピソードを執筆中)

熊村:そうですね...しかしあくまで公私の私の部分でやっているもので、会社の活動とは切り分けて考えています。ただ、以前から考えていた事が今回、公の活動とリンクしたという感じです。

 そもそも、巷で出ている書籍だったり、文献について、「なんである特定のツールやプラットフォームについてしか語ってないんだろう」と考えていました。少し前まではブログ、最近だったら、ホントにツイッターについてしか書かれてない。でもブログやツイッターはあくまでもツールであって、方法論じゃないのに、というのが自分の中でずっとあったんですよ。

 これまでのSMM論というのは、なぜかバズ&バイラルの方にしかフォーカスがあたっていなかった。そして、なぜかツール、プラットフォーム単位でしか語られていなかった。つまり、バズ&バイラル以外のSMMの「本質」について語っているものであったり、あるいはプラットフォームに依存しない形、つまりブログもあればツイッターもあるし、SNSもあるよ、みたいな形で広義にSMMをしっかり俯瞰出来ているものっていうのが実はほとんどなかったと思うんです。僕は「グランズウェル」をかなりバイブルだと思っているんですが、唯一「グランズウェル」がそれに近いかなぐらいのレベルだと思います。

--- 確かに熊村さんのブログには「グランズウェル」以外のリンクがあまり出てきませんね。

熊村:引用しようがないんですよ。元々あの「フレームワーク」ってないから作ってしまえというのが一番の発想なんですね。そもそもの初期衝動じゃないですけども、最初の原動力って「ないからつくってしまおう」なんです。唯一あったのが「グランズウェル」。でも「グランズウェル」だって、ページには限りがある訳ですし、幅広く適用出来るかと言うとそうでもないですし。「グランズウェル」だけを鵜呑みにしてしまったら、弊社の業態や業種、施策にそのまま直接応用して成功するのか失敗するのかというところもちょっとリスク高いなと。だったら、自分達の視点で「グランズウェル」のように包括したものをしっかりと作りましょうというのが、僕が今回、社内的にしっかりSMMをすすめていこうという追い風の中、作らせていただいたフレームワークなんです。だから「グランズウェル」と今回僕が自社内でちゃんとSMMをやるんだったら両方読んで下さいっていうのはありますね。

--- ちなみにこの「バイブル」は出版予定とかあるんですか?

熊村:ないです。

--- ないんですか?もったいない(笑)

熊村:ひょっとしたら出版して下さいって、言って下さる方がいらっしゃるのかもしれないですが、あまり考えてません。というのも、僕が今回フレームワークを作ったもう一つの理由でもあるんですが、今の世の中には「事例ばっかりだよね」という思いもあるんです。たとえば、どこどこの企業さんがブログを使って、こんな事をやったら売上がこうなりました。どこどこの企業さんがツイッターを使って、なにかプロモーションを仕掛けたらこれだけのセールスになりました、ばっかりじゃないですか? でも、実は他社の事例はあまり参考にならないと思っているんです。

 ただ、どうしてもやっぱり人の事例が気になるというのはありますし、知らない方がたからしてみれば、そう言った事例がある方が理解し易いというのは分かっています。実際問題、社内でフレームワークのトレーニングをやった時も、随時フィードバックを受けるんですが、事例を多目に盛り込んだ回の方がやっぱりポジティブなフィードバックが流れてくるんですよ。しかし、いくら他社の事例を出したところで、分かった気にはなれるかもしれませんが、それを実際自社に応用出来るかっていうと、そうでもなかったりするケースが多い。だから、僕が今回作ったフレームワークは、あくまでも社内の人が社内の施策をやっていくときに使えるものを目指したもので、ここに書いた事は「マイクロソフト」による一事例でしかなくて、他の業界、業種の方が、同じ事をやって上手く行くのかと言ったらまず難しいだろうなと思うんです。僕はマイクロソフトについてしか語れませんから。

 同じような内容をキチンと書く事が出来る人と言ったら、様々な業界・業種の企業の案件を数多く扱ってらっしゃるような、エージェンシーの方やプランニングされている方、クリエイターや、プロデューサーかもしれない。いずれにせよ、「広告主」側の企業の「中の人」ではない、と思います。出版して公の人に見てもらうという意味では、僕が出すと不完全になってしまうと思うんです。

--- 確かに、様々な取り組みの最大公約数を誰かが見つけて書籍化したら、それは凄く良いものになりますね。ただ、ほかに誰もやっている人がいないから、多分みんな熊村さんに期待してるのでは?

熊村:今後、ほかの企業の方が同じような事をやり始めて、どんどん色々な事例が外に出て来たら、そうした事例のOne of themとして弊社の事が語られるかもしれませんけれども、おそらくそれを書くのは僕たちじゃない、と思ってます。全てを踏まえたもっとすごいものを、誰かが書いてくれると信じています。

《次回へつづく》

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熊村剛輔氏 略歴
マイクロソフト株式会社 セントラル マーケティング本部
デジタル マーケティング & アナリティクス グループ
オンライン マーケティング マネージャー
ソーシャル メディア リード

 幼少より海外で過ごし、90 年代半ばから後半にかけてプロのサックス奏者として活動後、
IT 業界へ転身。
 リアルネットワークス株式会社で RealPlayer のプロダクトマーケティングおよび RealGuide、RealNews のエディター・イン・チーフを務め、コールマン・ジャパン株式会社で Web マーケティング全般および E コマースを統括したのち、2006 年マイクロソフト株式会社に入社。2009 年より「ソーシャル メディア リード」を名乗り、ソーシャル メディア マーケティング施策全般に携わる。
 
インタビュアー:中村壮秀(アライドアーキテクツ株式会社代表)

 ブロガーやソーシャルメディアのユーザーと企業のマッチングサイト「モニプラ」が、2009年度に最も会員から支持された企業を表彰する「ファンサイト・オブ・ザ・イヤー」を発表した。

モニプラ ファンサイト・オブ・ザ・イヤー2009 受賞企業発表サイト

投票イベントに参加したモニプラ会員1300人から得た回答をもとに、モニプラに出展している約400社の中からソーシャルメディアを上手く活用したファンサイトを運営する企業を選出。「ファンサイト・オブ・ザ・イヤー」の金賞は、Twitter、YouTube を活用したシャレコデザインが受賞。

シャレコスキンケア
【モニプラ】シャレコスキンケア ファンサイト

金賞受賞のシャレコデザイン株式会社 大野幸一氏コメント

「この度は、皆さん一人ひとりの本当に温かい1票で、このような大きな賞を受賞でき感謝の気持ちでいっぱいです。シャレコスキンケアスタッフ一同を代表しましてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。仕事で辛いことがあっても、あの日、あの時、あなたのブログで「幸ちゃん これからも応援してますよ!!」という書き込みに助けられたことがいっぱいありました!!何回も何回も読み返して励まされました。本当に本当にありがとうございました。」

投票者からのコメント(一部)

・商品の素晴らしさに加え、モニター企画の楽しさ、豊富さ、アフターケアの充実とどれをとっても 他の企業の群を抜いていました。
・レポートを書くと必ず、素敵な返事を書いていただけて、最後まできちんと親切な企業です。常  に見ていてくださる・・そんな素敵な企業は無かったのでイベントに参加していてとても楽しいで す。
・担当の大野さんからの心温まるメールやメッセージをいただき、本当にブロガーやお客様を大切 にしている気持ちが伝わってきます。

ファンサイト・オブ・ザ・イヤー 銀賞、銅賞の受賞企業は以下の通り。

【銀賞】
ハウスウェルネスフーズ株式会社
森永製菓株式会社
株式会社石澤研究所

【銅賞】
通宝海苔株式会社
ニッサン石鹸株式会社
株式会社リベルタ
合資会社 ネプト・プランニング
有限会社エフオービーコープ
有限会社 ビージェイ

モニプラ』について 【URL】 http://monipla.jp/
2008年4月に開始された、情報感度の高いブロガーやツイッターユーザー等と、ソーシャルメディアマーケティングを利用したい企業のマッチングサイト。企業は、モニプラに出展することで、簡単にファンサイトを構築することができ、新商品の告知や各種キャンペーンに利用出来る。初期投資が無料で、ブログやユーチューブ、ツイッター等のユーザーを対象としたソーシャルメディアマーケティングが可能になるため、世の中のソーシャルメディアに対する関心の急速な立ち上がりを受け、中堅・中小企業を中心に出展企業数を拡大中。

 先日開催された、「ソーシャルメディアマーケティングセミナー」において、米国Digital Media Strategies, LLC代表織田浩一氏のケーススタディで取り上げられた欧米の最新SMM事例を織田氏のご好意によりご紹介させていただきます。
 一般的にはあまり知られていない中小規模の企業によるリアルなSMM事例をご参考ください。


DB004.jpg【David's Bridal オンラインブライダルショップ】

URL:http://www.davidsbridal.com
期間: 2009年1月11日~2月23日

キャンペーン目的:
オンラインでの販促活動によりターゲットとする結婚年齢女性層の間で「結婚式の権威」となるブランドの構築。

キャンペーン内容:
「One Love:この人が世界で唯一の結婚相手」をテーマに参加者が「唯一の人」と感じた瞬間のストーリーを、同社のアクセサリーやドレスを使いながら、テンプレートで作成。閲覧ユーザーからの投票で選ばれたカップルには、理想の結婚式をプレゼントをするというコンテストキャンペーン。

David's Bridal002.jpg

 このキャンペーンでは、『Brickfish』http://www.brickfish.com/というソーシャルメディアマーケティングプラットフォームを活用。

 キャンペーン参加者がブログやSNSへ自分の作ったコンテンツを簡単に送れる仕組みを提供。自分に投票してもらいたいというモチベーションで積極的に知人に紹介するため、トラフィックが増え、また閲覧者から参加者への転換が発生しクチコミ化した。

 また、広告主はリアルタイムで、話題がどのように広がっているか、どの都市で広がっているか、どのブログ・SNSプラットフォームで広がっているかなどを見ることができるため、さらなるキャンペーン構築や最適化を検討できた。

 6週間で1,800以上のカップルが参加し、各参加者が平均12分費やして作成したコンテンツが、MySpace, Facebook, myYearbook, hi5, Tagged, LiveJounalなどのSNSやブログを通して紹介され、最終的には約180万人がなんらかの形でこのキャンペーンに触れた。
このキャンペーンにより、「David's Bridal」はショッピングサイトへのトラフィックを
約2倍に増やすことに成功した。

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《織田(おりた) 浩一氏 プロフィール》
 デジタル・メディア・ストラテジーズ社代表。ブログ・メルマガAd Innovator編集長。
アメリカ西海岸シアトルを本拠地とし、欧米における新規広告・メディアテクノロジー調査、新しいサービスモデルの調査、業界トレンド調査、企業提携の交渉代行、社内研修・セミナーなどコンサルティング業務を日本の大手広告会社、インタラクティブエージェンシー、メディア会社、調査会社、コンサルティング会社、大手商社、大手メーカーなどに提供している。また、欧米の最新広告・メディア情報に関するブログ・メルマガ「Ad Innovator-広告の近未来」も運営中。
http://www.adinnovator.com

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